自治体職員の勉強ブログ

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あずさビジネススクール『やさしくわかるコンプライアンスーー茶髪って違反ですか?』(2007)

やさしくわかるコンプライアンス

やさしくわかるコンプライアンス


「茶髪って違反ですか?」

という、誰もが答えに窮してしまう、そんなキャッチーなサブタイトルについての本書の回答は、

茶髪=(コンプライアンス)違反

だということ(ただし、時と場合による)。

本書によれば、一般にコンプライアンス法令遵守と理解されるが、それにより、法律に違反してなければ何をしてもいいという誤った結論にいたるのは、不合理で、不適切であるという。そして、コンプライアンスの本来の目的は、ステークホルダーの信頼を得ることであり、その意味では、法の網をすり抜ける行為なども、コンプライアンス違反だという(つまり、法令を遵守していても)。

本書は、全8話の小説形式で、スノークラフト社という架空の企業でおこる、コンプライアンスに関する様々な問題について考えるものになっている。
第1話では、営業部の相良の茶髪が問題となる。茶髪はもちろん法律違反ではないが、取引先から指摘があったことなどにより、ステークホルダーの信頼を失いかねないとされ、コンプライアンス違反として取り扱われることとなる。

第4話では、セクハラが問題になる。
セクハラには、

  1. 対価型セクハラ・・・職務上の立場・地位を利用して性的関係を迫り、要求に応じれば利益を与え、応じなければ不利益を与える行為。
  2. 環境型セクハラ・・・職場において性に関する言動を行うことによって、性的弱者に不快感を与え、働きにくい環境にする行為。
の2種類があると定義されており、セクハラ(基本的に本書は男性による女性への)防止に肝心なのは、女性社員を『女性』と意識しないこと(異性としてではなく、単なる職場の同僚として見ること)だという。


第6話では、クレームが問題とされる。クレームは的確な初期対応を行うことで概ね解決でき迅速で正確な初期対応を行えば、問題が大きくなることや、いざこざが起こることもないという。


*******


繰り返しになるが、コンプライアンスの目的はステークホルダーの信頼を得ることだという。すなわち、職場における咄嗟の判断や意思決定をどうすべきかというのが本書のテーマであったのだろう。そしてそれは、所属する集団に大きく左右される。その点、本書が小説形式なことは、職場の空気(人間関係や様々な思惑)とコンプライアンスが密接なものだ(コンプライアンスはコミュニケーションの中にこそある)ということを伝えるうえで、非常に有効であったのだと思う(最初は読み辛かったけど)。



木村草太『キヨミズ准教授の法学入門』(2012)

・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。

・法令等は日々更新されるものです。本稿に記載される法令名や条文等が最新のものとは限りませんし、最新情報を漏れなく補っていくことはしません。

・以上はこのブログに関する免責事項ですが、このブログの元となる研修や書籍等に対して上記の責任を帰するものでもありません。しかし、本稿を参考にされる場合、ご自身で書籍や法令等を一度ご確認いただくことを推奨いたします。


キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)

キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)


港湾大学で受講生0人の講義『法学入門2=法学原論』を担当するキヨミズ准教授が同僚のワタベ先生と、高校2年生のキタムラ君に法的思考のすばらしさを伝えるストーリー。
以下、本書から得られる法的思考とそれに係るいくつかの事項について取り上げたいと思います(説明は基本的に本書に基づいたものです)。

〈実定法と基礎法〉
法律科目の分類として、大きくは実定法(学)基礎法(学)があります。

実定法(学)
→現代日本の法律の内容を教える
憲法民法、刑法、知的財産法など)
基礎法(学)
→現代日本の法律から距離を置いて、哲学や歴史学の観点から分析したり、外国の法律の内容を教える
法哲学、法社会学、法制史、英米法など)

〈法的三段論法〉
裸の価値判断
→事実関係を見て、直感的にどうすべきかを考える方法

これに対して、

法的三段論法
→抽象的なルール(一般的・抽象的法命題)【大前提】を立ててから、事実関係を当てはめ(事実の包摂)【小前提】どうすべきか(価値判断)【結論】を考える方法

法的三段論法は、具体的事実関係をひとまずおいて、冷静な視点から議論を組み立てる論法

〈様々な法源
法源=法の源となる権威的存在
慣習法
自然法(正義や常識)
制定法
法源を意識し、そこから法命題を導くことは、自分の価値判断を相対化するために必要

〈自然法論vs法実証主義
自然法論
→自然法を法源とみなして展開される議論

これに対して、

→手続を踏んで制定された実定法のみを法とする考え

キヨミズ准教授はキタムラくんが通う高校での出張講義で、法学を勉強することの魅力について、次のように語ります。
法は言葉にすぎないのに、人間を本当に強く拘束している社会のインフラなんですね。インフラですから、普通に暮らしていると、それがどんな仕組みで動いているのか、誰が整備しているのか、目に入ってこないですね。でも、法学を勉強していると、そういうことが分かってくるわけですね。
(本書p.123より抜粋)

私も今の職場で働くまで、具体的な“法”というものを意識する(見る)ことはほとんどありませんでした。また、仕事においても、みながみな法の存在を知り、正確に把握しているというものでもありません。しかしながら、それが意識されたときの拘束力というのは、確かに強く感じるものです。

〈社会を分析する学問〉
キヨミズ准教授は、社会は色々な角度から分析可能だとした上で、次のように指摘
政治学、経済学、社会学、法学と、それぞれに、長所と短所、見えるところと見えないところがありますからね。優秀な社会科学者ほど、自分の方法論の限界を知っていますから、慎重になったり、他の学問を積極的に勉強したりしますね。
(本書p.72より抜粋)

私は大学院まで社会学を専攻していました。キヨミズ准教授は「いつも『そもそもその見方でよいのか』とそもそも論ばかりなのがダメ社会学」とここで喝破しますが、当時身の周りでそんなことを口に出すような人はなかなかいなかったと記憶します(自己否定になるので)。実際、学問をするとある思考様式に偏るというのは、ありがちな気がします。しかし、社会の見方(分析方法)は一つ(ある方法が万能)ではないという視点は非常に重要だと思います。これからはこの視点を忘れずに持っていきたいと思います。

道垣内弘人『プレップ 法学を学ぶ前に』(2010)

・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
・法令等は日々更新されるものです。本稿に記載される法令名や条文等が最新のものとは限りませんし、最新情報を漏れなく補っていくことはしません。
・以上はこのブログに関する免責事項ですが、このブログの元となる研修や書籍等に対して上記の責任を帰するものでもありません。しかし、本稿を参考にされる場合、ご自身で書籍や法令等を一度ご確認いただくことを推奨いたします。

公務員の仕事は法令に基づき行われています。すなわち、法令が公務員の行動指針であるということです。なんてことは至極当然のことのように思われるかも知れません。しかし、私のように特に考えもなしに公務員になった者にとって、それは衝撃的な気付きでした。法令への知識が公務員として働く上での重要な要素であるということに気付いて以来、法令については自分なりに学んでいきたいと思うようになりました。そんな中、法学入門ということで手にしたのがこの一冊。

プレップ法学を学ぶ前に (プレップシリーズ)

プレップ法学を学ぶ前に (プレップシリーズ)

法学を学ぶ“前に”ということで、法学の議論に最初の段階でつまずいてしまう理由は次の2つであると、筆者は言っています。

  1. 法学における議論の“性格”が理解できない。
  2. 前提知識が欠けている。

本書では、法学における議論の性格や前提知識について、次のように展開していきます。

〈法規の構造〉
ある要件が充足されれば、ある効果が発生する」というのが、法的なルールの基本形態であり、条文の基本的な書き方だといいます。次の条文は、その例。

ex.    刑法235条
(窃盗)
第235条    他人の財物を窃取した者は(要件)、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する(効果)

例外としては、効果が他の条文に規定されているものや、「効果」がないと解されている条文もあるそうです。

〈法解釈の必要性〉
条文中の言葉が具体的にどのようなことを意味するのかは、すべて「法解釈」に委ねられているのだといいます。それは、条文というのが様々な具体的な事案に適用されることを前提に、抽象的な言葉でできあがっているものだからだそうです。
この抽象性は「共通性のある紛争は、一貫した基準で裁定されなければ不公平であり、バランスが欠けることは許されない」という認識のもとに成り立っており、実社会に存在する様々な紛争のうち一定のものに共通要素を見いだしたものが法律の条文のため、具体的な紛争を抽象化したかたちであるのは必然的であり、解釈の必要性(≒抽象性)が複数解釈の可能性解釈の余地を生むのも必然だといいます。

〈法解釈の諸方法〉
解釈のスタートラインは、文理解釈(文法的意味の確定)であり、法令用語などを含め読み解かなければなりません。
そして、その次のステップが、目的論的解釈(法の“目的”に従って解釈すること)であり、ここで「あるべき解釈論」を決めることになります。

法の“目的”の定め方は、
立法者意思説
→立法者が立法の際に有していた目的が法の目的
法律意思説
→法は立法者を離れた客観的な存在であり、現代の社会においてその法が有する目的として客観的に認識されるところが法の目的

の大きく2つという見解があり、それを探究するために、
体系的解釈
→他の法との体系的整合性に基づく
歴史的解釈
→制度や法規の歴史的な沿革に基づく
比較法的解釈
→外国法との比較に基づく
利益考量
→保護される価値・利益に基づく
が行われます。

判例の重要性〉
また、抽象的な制定法の条文が実際の事件に当てはめられることによって、その具体的な意味内容がだんだんと定まってくるのだといいます。
裁判所によって示された解釈は、きわめて強い力を有し、その後、裁判所が解釈を下すときに判例として尊重されます。とりわけ最高裁判所によって示された法解釈は、裁判の世界においては、制定法の条文そのものと同じくらいの価値があるのだそうです。

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本書により得られた知見は、法は解釈してなんぼということだと思います。1つの条文をとっても、それに何通りかの解釈があるというのはおかしいことではないんですね。したがって、法を具体的事案に適用するにあたっては、その都度事案をもとに、条文に向き合わなければならないということになるでしょう。

〈おまけ〉
制定法を参照するにあたって、便利なサイト

法律研修(地方自治法)②

・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
・法令等は日々更新されるものです。本稿に記載される法令名や条文等が最新のものとは限りませんし、最新情報を漏れなく補っていくことはしません。
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前回の続き(後半)。


【条例】
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、地域における事務及びその他の事務で法律又は政令により処理することとされるものに関し、条例を制定することができる。

※法令に違反しない限りにおいて
=すでにある事項について法令が定められている場合であっても、同じ事項について条例を定めることができるが、両者の間に矛盾抵触があるときには、法律が優先的に適用される。

よって、
上乗せ条例(国の法令よりも厳しい規制)
横出し条例(国の法令よりも規制の範囲が広い)
を制定することができる。

→矛盾抵触があるかは、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、決める。


【財務】
地方公共団体は、その事務を処するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない

会計年度・・・4月1日から翌年の3月31日まで。その会計年度の収入(歳入)でその会計年度の支出(歳出)を賄う(会計年度末独立の原則

会計方式・・・現金主義会計(↔︎発生主義会計)

予算・・・一会計年度における歳入・歳出の見積歳出に関しては、条例・規則と同じく、法的拘束力を持つ

ⅰ   歳入歳出予算(一会計年度における一切の収入・支出)
ⅱ  継続費(完成まで数年要するものについて、例外的に支出権限を与えられているもの)
繰越明許費(年度内に支出できない見込みのものについて、翌年度に繰り越して使用できる経費)
債務負担行為(歳出予算、継続費、繰越明許費を除き、将来にわたって債務を負担する行為)
ⅴ  地方債地方公共団体が一会計年度を超えて長期にわたって借金すること)
一時借入金(歳出予算で定められた支出をするのに現金が不足している場合に、一時的に現金を借りること)
ⅶ 予算の流用(予算を補正することなく、予算執行上の処理として、特定の目的の経費を抑制し、その財源を他の支出費の増額に充てること)

決算・・・一会計年度の予算の執行の結果を表示する行為(又はその計算表)。会計管理者調整し、長に提出。長は、監査委員の審査に付し、議会の認定に付す。


【公の施設】
公の施設とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために、普通地方公共団体が設ける施設。
(ex.     病院、老人ホーム、学校、公園、体育館、青年の家)

設置・管理→条例で定めなければならない。
cf.   民間資金等活用事業PFIPrivate Finance Initiative)
国又は公共団体が、契約・協定により、リスクの分担と責任の所在を明確にし、公共施設の整備・サービスの提供を民間に委ね、民間企業の創意工夫により、費用対効果の高いサービスを目指す手法

→民間企業等から地方公共団体によって指定された指定管理者は、公の施設の利用料金や開館時間やサービス内容等を自ら決められる(利用料金を収入とすることができる)。

法律研修(地方自治法)①

・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
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8月10、11日の2日間、地方自治法に関する研修を受けました。
以下、その中でも重要だと思った点のまとめです(前編)。


地方自治法行政組織法の一つ。

地方自治総説】
地方自治の本旨団体自治住民自治

団体自治・・・地方公共団体に団体としての独立性を認めて、団体内部の問題を自主的に解決させるべき。

住民自治・・・地方の問題は住民自らが考え自ら解決すべき。

地方自治制度の本質的内容である地方自治の本旨は、法律をもってしても侵すことができないとされる(制度的保障説)。


地方公共団体の種類】
A、普通地方公共団体都道府県・市町村)

⚪︎指定都市(政令指定都市・・・政令で指定する人口50万人以上の市都道府県から一定の権限を委譲され、市でありながら、都道府県並みに扱われる。

⚪︎中核市・・・政令で指定する人口20万人以上の市


⚪︎特別区・・・東京都の区。市と同格の独立した地方公共団体

⚪︎地方公共団体の組合一部事務組合広域連合
一部事務組合=事務の一部の共同処理(ゴミ処理、し尿処理など)に関し、都道府県の場合は総務大臣、市町村・特別区の場合は知事の許可を得て設立。
広域連合=広域処理が適当な事務の共同処理に関し、都道府県の場合は総務大臣、市町村・特別区の場合は知事の許可を得て設立。

⚪︎財産区・・・江戸時代の村が、町村合併後も、山林やため池等を合併相手が勝手に使わないようにするために設けたもの。


地方公共団体の事務】

自治事務・・・地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のもの

法定受託事務・・・国または都道府県が本来果たすべき役割に係る、法律又はこれに基づく政令により特に地方公共団体にその処理が委託される事務(国勢調査国政選挙など)

機関委任事務(国その他の公共団体の事務を、下級行政機関として地方公共団体が処理)は全面的に廃止。


A、議事機関
⚪︎議会意思決定機関長と対等独立

B、執行機関
⚪︎知事市町村長)=独任制の行政庁
⚪︎委員会委員教育委員会選挙管理委員会農業委員会監査委員など)=委員会は合議制の行政庁

C、補助機関
⚪︎会計管理者
⚪︎会計職員
⚪︎専門委員

松島完『通年議会の〈導入〉と〈廃止〉ーー長崎県議会による全国初の取り組み』(2014)

・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
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〈導入〉と〈廃止〉というタイトルに惹かれ、「通年議会」のメリット・デメリット、その実経験に基づいた両方向的な考察を期待して本書を手に取りました。
その点、著者は完全なる「通年議会」導入賛成派だったため、私が(勝手に)抱いていた期待は裏切られてしまいましたが笑

そもそも「通年議会」なんて聞いたことさえないかも知れません。
まずは、「通年議会」とは何かについて説明していきたいと思います。

一般的に、地方議会は年4回の定例会を行い、その定例会の期間を会期としています。一方、通年議会では、会期を1年間とするため、定例会の概念がなくなります。

地方自治法では、次のように通年議会を可能にしています。

地方自治法第102条の2
    普通地方公共団体の議会は、前条の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる。

会期を通年にすることにより考えられるのは、たとえば、従来の定例会で会期ではなかった時期にスムーズに議会での審議を行うことができることです。
また、専決処分(本来、議会の議決が必要な事項について、議会の議決をしないで首長が決めること)事項の一部に議会の議決が及ぶようにもなります。

(皆さんのお住みの地域の議会が定例会方式もしくは通年議会方式のどちらをとっているのか、お調べになると面白いかもしれません。)

少々長くなりますが、著者は通年議会について次のように言っています。
通年議会とは、議会をいつでも開けるようにして、県民の方々の声を即座に、そして多く届けられるようにし、県政に反映させるというものである。現在は、議会側に議会を開く主導権がなく、首長(知事)側に主導権がある。行政の本質は権力であり、この権力に対して、議会がしっかりと監視をしないといけない。また政策提言をし、より民意を反映させなければならない。議会が本来の役割を果たすためにも、議会側が議会を開く主導権を持つべきであり、通年議会によってそれが可能になるのである。
(本書p.28より抜粋)

ちなみに著者は、現役の長崎県議会議員(2015年6月現在)で、長崎県議会では2012年3月より通年議会の導入を可決し、その2年後の2014年2月に通年議会の廃止を決定しています。そして、著者は通年議会廃止の最大の要因を、通年議会反対派である政治団体(ここでは政治団体Aとしておきます)が議会の最大会派となったためだとしています。

本書で挙げられていた、通年議会のメリット・デメリットは次の通り。

通年議会のメリット〉
  • 議会活動のパワーアップ(議長が議会の招集権をもつ)
  • 議会活動のスピードアップ(議会をいつでも開ける)
  • 議会と執行部との間に緊張感が生まれる(議会による監視機能強化)。
  • 議決を経ない専決処分が減る(民意を反映できる)。
〈通年議会のデメリット〉
→著者は賛成派のため、政治団体Aの言い分となります。
  • 議員や職員の拘束時間が長い。
  • 専決処分が無くなれば、自然災害等に対応すべき事態が起きた時、議会対応を優先するあまり現場対応が後回しになる。
著者の議員としての改革への熱意は素晴らしいものですし、今回の廃止は通年議会の是非を十分検証したものではなかったのかも知れませんが、読者としては、もう少しフラットな視点で、通年議会の是非を検討できる内容であれば良かったと思います。

法制執務研修②【一部改正等】

・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
・法令等は日々更新されるものです。本稿に記載される法令名や条文等が最新のものとは限りませんし、最新情報を漏れなく補っていくことはしません。
・以上はこのブログに関する免責事項ですが、このブログの元となる研修や書籍等に対して上記の責任を帰するものでもありません。しかし、本稿を参考にされる場合、ご自身で書籍や法令等を一度ご確認いただくことを推奨いたします。

前回の続きです。
これまで法令の表現について見てきました。これらはもちろん法令を「読む」時に重要です。しかし実は、法令を「作る」時にこそ、これらの知識は厳密さを求められ、より重要になるのではないかと思われます。ちなみに、法令には「新規制定」「一部改正」「全部改正」「廃止」「廃止制定」の5つがあるようです。後半の研修内容は、このうちで使用頻度の最も高い(?)「一部改正」法令(いわゆる、「○○法(条例)の一部を改正する法律(条例)」)を作る際に必要な知識に関するものでしたということで、次は「一部改正」について。

【一部改正の表現(5種類)】
一部改正の際に、改め文(正式には改正規定)」に用いられる表現です。

改める(条、項、号等の一部・全部)
→ある文字列等を新しい文字列等に置き換えること。

加える(条、項、号等の一部・全部)
→ある文字列等の後ろ(条・項・号を追加する場合は、前にとする場合もある。)に文字列を追加すること。

削る(条、項、号等の一部・全部)
→ある文字列等を条文からなくすこと。

とする(繰上げ、繰下げ)
→条、項、号等が加わったり、削られたりしたときに条名、項番号及び号名等を整えること。

付する(見出し、章名・節名等)
→見出し、章名・節名等を新たに付けること。

【条、項、号の改正の原則】
原則です。例外もあります。そして、ここにあげるのは重要だと思われるほんの一部で、ルールは他にもたくさんあります(汗)

①前にある条、項、号から順を追って、条文の流れに沿って行う。

②1つの条の改正については、1文で改正を行う。

③改正箇所は、「中」を用いて特定する。

④字句を引用する際は、1つの独立した意味をもつ字句を単位として引用する。

原則①〜④について、地方自治法の一部を改正する法律(平成24年法律第72号)の第100条第2項を見てみると、次のような改正が行われています。

    第100条第2項中「定が」を「定めが」に、「外」を「ほか」に、「前項」を「前項後段」に、「但し」を「ただし」に改め同条第3項中「第1項」を、「第1項後段」に、「禁錮(こ)」を「禁錮」に改め同条第14項中「調査研究」の下に「その他の活動」を加え、「政務調査費」を「政務活動費」に改め、「方法」の下に「並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲」
加え同条第15項中政務調査費」を「政務活動費」に改め同項の次に次の1項を加える
    議長は、第14項中の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。

まず、①の原則に従い、第100条の2項→3項→14項→15項の順に改正が行われている(実際は、1項→2項→…の順でも行われているが、改め文が分かれているので省略)。
次に、②の原則に従い、この第100条の改正については、頭の「第100条2項中…」から「…次の一項を加える。」までは、一文で済まされている。しかし、この条のように、新たな1項を加えるような場合、改め文例外的に2文以上になる。
そして、③の原則に従い、「中」を使って、改正箇所を特定している。
さらに、④の原則に従い、たとえば「政務調査費」から「政務活動費」への変更は字句としては「活動」の部分のみだが、「政務活動費」全体が引用されている。

⑤「、」は、その後ろの字句に従属している。

⑥削除方式(冒頭又は途中の条・号のみ)

この方式については、先の地方自治法の一部を改正する条例で次のように使われています(なお、ここでも原則②は崩れている)。

    第110条及び第111条を次のように改める
第110条及び第111条    削除