法律研修(地方自治法)①
・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
・法令等は日々更新されるものです。本稿に記載される法令名や条文等が最新のものとは限りませんし、最新情報を漏れなく補っていくことはしません。
・以上はこのブログに関する免責事項ですが、このブログの元となる研修や書籍等に対して上記の責任を帰するものでもありません。しかし、本稿を参考にされる場合、ご自身で書籍や法令等を一度ご確認いただくことを推奨いたします。
8月10、11日の2日間、地方自治法に関する研修を受けました。
以下、その中でも重要だと思った点のまとめです(前編)。
松島完『通年議会の〈導入〉と〈廃止〉ーー長崎県議会による全国初の取り組み』(2014)
・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
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通年議会の“導入”と“廃止”―長崎県議会による全国初の取り組み (地方自治ジャーナルブックレット)
- 作者: 松島完
- 出版社/メーカー: 公人の友社
- 発売日: 2014/09
- メディア: 単行本
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その点、著者は完全なる「通年議会」導入賛成派だったため、私が(勝手に)抱いていた期待は裏切られてしまいましたが笑
そもそも「通年議会」なんて聞いたことさえないかも知れません。
まずは、「通年議会」とは何かについて説明していきたいと思います。
一般的に、地方議会は年4回の定例会を行い、その定例会の期間を会期としています。一方、通年議会では、会期を1年間とするため、定例会の概念がなくなります。
地方自治法では、次のように通年議会を可能にしています。
地方自治法第102条の2
普通地方公共団体の議会は、前条の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる。
会期を通年にすることにより考えられるのは、たとえば、従来の定例会で会期ではなかった時期にスムーズに議会での審議を行うことができることです。
また、専決処分(本来、議会の議決が必要な事項について、議会の議決をしないで首長が決めること)事項の一部に議会の議決が及ぶようにもなります。
(皆さんのお住みの地域の議会が定例会方式もしくは通年議会方式のどちらをとっているのか、お調べになると面白いかもしれません。)
少々長くなりますが、著者は通年議会について次のように言っています。
通年議会とは、議会をいつでも開けるようにして、県民の方々の声を即座に、そして多く届けられるようにし、県政に反映させるというものである。現在は、議会側に議会を開く主導権がなく、首長(知事)側に主導権がある。行政の本質は権力であり、この権力に対して、議会がしっかりと監視をしないといけない。また政策提言をし、より民意を反映させなければならない。議会が本来の役割を果たすためにも、議会側が議会を開く主導権を持つべきであり、通年議会によってそれが可能になるのである。(本書p.28より抜粋)
ちなみに著者は、現役の長崎県議会議員(2015年6月現在)で、長崎県議会では2012年3月より通年議会の導入を可決し、その2年後の2014年2月に通年議会の廃止を決定しています。そして、著者は通年議会廃止の最大の要因を、通年議会反対派である政治団体(ここでは政治団体Aとしておきます)が議会の最大会派となったためだとしています。
本書で挙げられていた、通年議会のメリット・デメリットは次の通り。
〈通年議会のメリット〉
- 議会活動のパワーアップ(議長が議会の招集権をもつ)
- 議会活動のスピードアップ(議会をいつでも開ける)
- 議会と執行部との間に緊張感が生まれる(議会による監視機能強化)。
- 議決を経ない専決処分が減る(民意を反映できる)。
〈通年議会のデメリット〉
→著者は賛成派のため、政治団体Aの言い分となります。
- 議員や職員の拘束時間が長い。
- 専決処分が無くなれば、自然災害等に対応すべき事態が起きた時、議会対応を優先するあまり現場対応が後回しになる。
著者の議員としての改革への熱意は素晴らしいものですし、今回の廃止は通年議会の是非を十分検証したものではなかったのかも知れませんが、読者としては、もう少しフラットな視点で、通年議会の是非を検討できる内容であれば良かったと思います。
法制執務研修②【一部改正等】
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前回の続きです。
これまで法令の表現について見てきました。これらはもちろん法令を「読む」時に重要です。しかし実は、法令を「作る」時にこそ、これらの知識は厳密さを求められ、より重要になるのではないかと思われます。ちなみに、法令には「新規制定」「一部改正」「全部改正」「廃止」「廃止制定」の5つがあるようです。後半の研修内容は、このうちで使用頻度の最も高い(?)「一部改正」の法令(いわゆる、「○○法(条例)の一部を改正する法律(条例)」)を作る際に必要な知識に関するものでした。ということで、次は「一部改正」について。
一部改正の際に、「改め文(正式には改正規定)」に用いられる表現です。
①改める(条、項、号等の一部・全部)
→ある文字列等を新しい文字列等に置き換えること。
②加える(条、項、号等の一部・全部)
→ある文字列等の後ろ(条・項・号を追加する場合は、前にとする場合もある。)に文字列を追加すること。
③削る(条、項、号等の一部・全部)
→ある文字列等を条文からなくすこと。
④とする(繰上げ、繰下げ)
→条、項、号等が加わったり、削られたりしたときに条名、項番号及び号名等を整えること。
⑤付する(見出し、章名・節名等)
→見出し、章名・節名等を新たに付けること。
【条、項、号の改正の原則】
原則です。例外もあります。そして、ここにあげるのは重要だと思われるほんの一部で、ルールは他にもたくさんあります(汗)
①前にある条、項、号から順を追って、条文の流れに沿って行う。
②1つの条の改正については、1文で改正を行う。
③改正箇所は、「中」を用いて特定する。
④字句を引用する際は、1つの独立した意味をもつ字句を単位として引用する。
原則①〜④について、地方自治法の一部を改正する法律(平成24年法律第72号)の第100条第2項を見てみると、次のような改正が行われています。
第100条第2項中「定が」を「定めが」に、「外」を「ほか」に、「前項」を「前項後段」に、「但し」を「ただし」に改め、同条第3項中「第1項」を、「第1項後段」に、「禁錮(こ)」を「禁錮」に改め、同条第14項中「調査研究」の下に「その他の活動」を加え、「政務調査費」を「政務活動費」に改め、「方法」の下に「並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲」
を加え、同条第15項中「政務調査費」を「政務活動費」に改め、同項の次に次の1項を加える。
議長は、第14項中の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。
まず、①の原則に従い、第100条の2項→3項→14項→15項の順に改正が行われている(実際は、1項→2項→…の順でも行われているが、改め文が分かれているので省略)。
次に、②の原則に従い、この第100条の改正については、頭の「第100条2項中…」から「…次の一項を加える。」までは、一文で済まされている。しかし、この条のように、新たな1項を加えるような場合、改め文は例外的に2文以上になる。
そして、③の原則に従い、「中」を使って、改正箇所を特定している。
さらに、④の原則に従い、たとえば「政務調査費」から「政務活動費」への変更は字句としては「活動」の部分のみだが、「政務活動費」全体が引用されている。
⑤「、」は、その後ろの字句に従属している。
⑥削除方式(冒頭又は途中の条・号のみ)
この方式については、先の地方自治法の一部を改正する条例で次のように使われています(なお、ここでも原則②は崩れている)。
第110条及び第111条を次のように改める。
第110条及び第111条 削除
法制執務研修①【法令の表現】
・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
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【、の用法】
①主語の次には「、」を付ける。ただし、句等の主語には付けない。
②動詞、形容詞又は副詞(活用する字句)を「及び」「又は」でつなぐときは、その前に「、」を付ける。
③ ②と同様に、「その他」でくくるときは、その前に「、」を付ける。
④ ②と同様に、「かつ」でつなぐときは、その前後には「、」を付ける。
⑤「ただし」「したがって」「この場合において」等の接続詞(句)の次には「、」を付ける。
⑥主語と述語の間に長い条件句を挿入するときは、その条件句の前後に「、」を付ける。
たとえば、
地方自治法第100条
4 議会は、選挙人その他の関係人が公務員たる地位において知り得た事実については、その者から職務上の秘密に属するものである旨の申立を受けたときは、当該官公署の承認がなければ、当該事実に関する証言又は記録の提出を請求することがてきない。・・・
まず、①により、「議会は、」は主語であるため「、」が付くが、「・・・関係人が」は主語であるが句の中にあるので「、」は付かない。次に、主語「議会は、」に対する述語は「当該事実に関する・・・」以下なので、その間の句「その者から・・・」及び「当該官公署の・・・」は、⑥により、その前後に「、」を付けるのが適当であろう。
【「その他」の用法】
「その他」の前にある字句と「その他」の後にある字句とが並列の関係にある場合に用いる。
【「その他の」の用法】
「その他の」の前にある字句が「その他の」の後にある、より内容の広い意味を有する字句の例示として、その一部を成している場合に用いられる。
たとえば、
地方自治法第138条
3 事務局に事務局長、書記その他の職員を置く。
ここから言えるのは、事務局長も書記も職員であるということであり、加えて、それら以外の職員もいるということである。
【漢字使用について】
次のものは、仮名で表記する(例)。
虞・恐れ→おそれ
且つ→かつ
従って→したがって
但し→ただし
但書→ただし書
外・他→ほか
又→また
因る→よる
拘わらず→かかわらず
此→この
之→これ
其→その
煙草→たばこ
為→ため
以て→もって
等(ら)→ら
猥褻→わいせつ
漢字使用について詳しくは、「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日付け内閣法制局長官決定)を参照。
条例の読み方入門
・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。
・法令等は日々更新されるものです。本稿に記載される法令名や条文等が最新のものとは限りませんし、最新情報を漏れなく補っていくことはしません。
・以上はこのブログに関する免責事項ですが、このブログの元となる研修や書籍等に対して上記の責任を帰するものでもありません。しかし、本稿を参考にされる場合、ご自身で書籍や法令等を一度ご確認いただくことを推奨いたします。
【。の用法】
原則、文末には「。」を付けるが、名詞のあとには「。」を付けない(次に文章等が続くときはこの限りではない)。ただし、名詞の「こと」と「とき」は例外で、これらのあとには「。」を付ける。
たとえば、地方自治法第96条、第109条だと、
一 条例を設け又は改廃すること。
3 議会運営委員会は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、請願等を審査する。
一 議会の運営に関する事項
みたいな感じ。
【接続詞の用法】
・原則、接続詞は平仮名表記であるが、例外的に「又は」、「若しくは」、「及び」、「並びに」は漢字で表記する(よって、「また」は平仮名で表記する)。
・「選択的接続詞(orみたいなもの)」の「又は」「若しくは」に関して、「又は」は最大レベルのものを区別する際に用いられるため、接続のかたまりの中では1回しか使えない。
・「併合的接続詞(andみたいなもの)」の「及び」「並びに」に関して、「及び」は最小レベルのものを区別する際に用いられるため、接続のかたまりの中では1回しか使えない。
たとえば、地方自治法第92条の2の場合、
第92条の2 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及び支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。
まず、「又は」「若しくは」に注目すると、
当該地方公共団体に対し請負をする者及び支配人
「又は」
「若しくは」
これらに準ずべき者、支配人及び清算人
となる。
さらに、初めの「及び」は「者」と「支配人」を、
2回目の「及び」は、「者」「支配人」「清算人」をつないでいるものだと思われる。
内容としては、2日間にわたるものを半日分にしたものだそうです。そのためか、講師の話は非常にわかりやすかった分、厳密性には少し欠けていたようにも思えました(これは、後日、2日間の法制執務研修を受けて感じたこと)。とはいえ、無料でこのようなセミナーを開催してくれるなんて、本当にありがたいことです。