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木村草太『キヨミズ准教授の法学入門』(2012)

・本稿は法令(法律や条例)等に関するものですが、その解釈はこのブログ筆者である私の独自のものであったり、誤りが含まれている可能性があります。

・法令等は日々更新されるものです。本稿に記載される法令名や条文等が最新のものとは限りませんし、最新情報を漏れなく補っていくことはしません。

・以上はこのブログに関する免責事項ですが、このブログの元となる研修や書籍等に対して上記の責任を帰するものでもありません。しかし、本稿を参考にされる場合、ご自身で書籍や法令等を一度ご確認いただくことを推奨いたします。


キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)

キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)


港湾大学で受講生0人の講義『法学入門2=法学原論』を担当するキヨミズ准教授が同僚のワタベ先生と、高校2年生のキタムラ君に法的思考のすばらしさを伝えるストーリー。
以下、本書から得られる法的思考とそれに係るいくつかの事項について取り上げたいと思います(説明は基本的に本書に基づいたものです)。

〈実定法と基礎法〉
法律科目の分類として、大きくは実定法(学)基礎法(学)があります。

実定法(学)
→現代日本の法律の内容を教える
憲法民法、刑法、知的財産法など)
基礎法(学)
→現代日本の法律から距離を置いて、哲学や歴史学の観点から分析したり、外国の法律の内容を教える
法哲学、法社会学、法制史、英米法など)

〈法的三段論法〉
裸の価値判断
→事実関係を見て、直感的にどうすべきかを考える方法

これに対して、

法的三段論法
→抽象的なルール(一般的・抽象的法命題)【大前提】を立ててから、事実関係を当てはめ(事実の包摂)【小前提】どうすべきか(価値判断)【結論】を考える方法

法的三段論法は、具体的事実関係をひとまずおいて、冷静な視点から議論を組み立てる論法

〈様々な法源
法源=法の源となる権威的存在
慣習法
自然法(正義や常識)
制定法
法源を意識し、そこから法命題を導くことは、自分の価値判断を相対化するために必要

〈自然法論vs法実証主義
自然法論
→自然法を法源とみなして展開される議論

これに対して、

→手続を踏んで制定された実定法のみを法とする考え

キヨミズ准教授はキタムラくんが通う高校での出張講義で、法学を勉強することの魅力について、次のように語ります。
法は言葉にすぎないのに、人間を本当に強く拘束している社会のインフラなんですね。インフラですから、普通に暮らしていると、それがどんな仕組みで動いているのか、誰が整備しているのか、目に入ってこないですね。でも、法学を勉強していると、そういうことが分かってくるわけですね。
(本書p.123より抜粋)

私も今の職場で働くまで、具体的な“法”というものを意識する(見る)ことはほとんどありませんでした。また、仕事においても、みながみな法の存在を知り、正確に把握しているというものでもありません。しかしながら、それが意識されたときの拘束力というのは、確かに強く感じるものです。

〈社会を分析する学問〉
キヨミズ准教授は、社会は色々な角度から分析可能だとした上で、次のように指摘
政治学、経済学、社会学、法学と、それぞれに、長所と短所、見えるところと見えないところがありますからね。優秀な社会科学者ほど、自分の方法論の限界を知っていますから、慎重になったり、他の学問を積極的に勉強したりしますね。
(本書p.72より抜粋)

私は大学院まで社会学を専攻していました。キヨミズ准教授は「いつも『そもそもその見方でよいのか』とそもそも論ばかりなのがダメ社会学」とここで喝破しますが、当時身の周りでそんなことを口に出すような人はなかなかいなかったと記憶します(自己否定になるので)。実際、学問をするとある思考様式に偏るというのは、ありがちな気がします。しかし、社会の見方(分析方法)は一つ(ある方法が万能)ではないという視点は非常に重要だと思います。これからはこの視点を忘れずに持っていきたいと思います。